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オレンジ色の世界で -イラク・シリア難民キャンプ-

Posted by SJ on 06.2014 旅行・出張   0 comments   0 trackback
何か月も更新が止まってしまいました。
前回と同じく、今回も出張先からの更新です。

現在筆者は仕事でイラク北部のクルディスタン地域(クルド自治区)に来ています。

さしあたりの拠点はアルビル市。
仕事の現場はここクルディスタンに点在するシリア難民キャンプ。

外務省の渡航情報ページの色分けはアルビル市が黄色、その他クルディスタン地域がオレンジ。
白抜きもあわせて五段階の色分けのうち、一番危険とされる赤は一般の邦人は退避勧告・渡航禁止なので、それに次ぐオレンジは実質渡航可能な中で最も危険度が高い地域ということになります。
筆者は今回(おそらく)初めてオレンジの世界に足を踏み入れました。
(ナイジェリアでクロスリバー州に行った当時、あそこは黄色だったかオレンジだったか・・。)

外務省の色分けについては別に一本記事を書けるくらい色々思うところがありますが、それは今回は脇へ置いておいて。


筆者は今回、難民キャンプというところに初めて足を踏み入れました。
よくUNHCRの広告なんかで目にする、砂地に延々と白いテントが並んだ光景。
あれが目の前に広がって、その中を歩くのです。


どんな悲惨な環境で、どんな悲壮な顔をした人が暮らしているのだろうか。
キャンプじゅうに病がはびこり、子供は栄養失調に苦しんでいるのだろうか。
そう思うでしょうか。


それは必ずしも難民キャンプの真実ではありません。

難民キャンプで筆者を迎えたのは、

凧上げをして楽しげに遊ぶ子供たち、
テントに手招きしてお茶に誘ってくれるお母さん、
そしてキャンプ内にぽつぽつと並ぶ小さな商店や露店。

そこにあったのはごく当たり前の人の営みで、無邪気な笑い声で、しなやかな生命力でした。

実際、このあたりの難民キャンプは「五つ星キャンプ」とも呼ばれる、比較的整備の行き届いたものです。
一方で、世界には本当に劣悪な環境の難民キャンプも存在すると言います。
今であれば中央アフリカや南スーダンから10万単位の難民が発生していますが、国際社会からの援助資金はほとんど集まっていません。
隣国へ逃れても、その国の政府にもそんなに資金的余裕はありません。
彼らに比べたら、きっとここにいるシリア難民は幸運で、恵まれた環境にいると言えるのでしょう。


では、なぜ。
なぜ中央アフリカや南スーダンの難民を差し置いてシリア難民が未だに世界の関心を集めるのか。
おそらく規模の問題もあるでしょう。
シリア難民は現在約250万人。中央アフリカ、南スーダンはそれぞれ20万人程度。
加えて、アラブの春から続く中東地域への世界の注目。
その他、きっと途方もなく大きな渦のような、政治的な理由も存在するのかもしれません。

援助の世界に身を置いていると、いろんな渦があちこちで蠢いているのが見えます。
営利企業にいた時も、政府機関にいた時も、市民社会にいる今も、
その渦の流れに抗うことはできなくて、渦ごと壊す力もなくて、
ただただいきどおって、たまに自分の軸を揺さぶられるような体験をします。

途方もない渦を前に、絶対的な正義など無いと知って、
それでもこの世界にとどまる。

たぶん筆者は、ただ美しいものを見たいだけなのです。

難民キャンプの小学校で子供に笑いかけると、はにかんだように笑顔を返してくれます。
たぶん片手で数えるほどしか知らない英語の言葉で、盛んにこちらに声をかけます。
授業中でも、校舎がわりのテントの窓をめくってはこちらに笑顔を投げかけます。
毎日WFPから配られる栄養補助ビスケットを筆者に渡して、頬にキスをしてくれます。

こんなに愛おしくて美しいものを目にして、背中を向けることなど誰もできないでしょう。
虚構の正義でも政治の渦でも、その中でいいように動かされているのでも、もうきっとどうだってよくて、
ただただ、私は彼らの中の綺麗な思い出になりたい。
今夜眠りについて明日には忘れるような、つかの間のものでもいいから、
できればいい人間として、できればいい日本人として、彼らの綺麗な思い出になりたい。


この世界を志したその日からずっと、私は生を希求する人が好きです。
与えられた環境で精いっぱい努力して楽しく生きる。
そういう姿勢に、日本にいては見つけがたい美しさが見えるのです。

そういう美しさをここで見られたという意味で、難民キャンプは私をもう一度原点に連れ戻してくれました。

まだしばらくこの地のとどまって、彼らのために仕事ができることを嬉しく思います。

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プロフィール

SJ

Author:SJ
大阪生まれ、東京かぶれ、オーストラリア、ナイジェリア経由、2013年英国にてアフリカ研究修士号取得。
関心事項はアフリカ、開発、国際情勢、日本の政治・社会、メディア。
趣味は海外旅行と映画鑑賞、写真撮影。
世界で一番好きなものは猫(大小問わず)。

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