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カメルーン誘拐事件から見る日本人のアフリカ観

Posted by SJ on 22.2013 アフリカ   0 comments   0 trackback
日本人のアフリカ観についてはマリの事件の時も少し書きましたが、
カメルーンのフランス人誘拐事件のニュースのコメントを見ていて色々書きたくなったので、
コメント欄から抜粋して考察してみます。
(コメントの引用元:http://headlines.yahoo.co.jp/cm/main?d=20130220-00000000-jij_afp-int&s=lost_points&o=desc&p=1)

引用の前に、
コメントした方々おそらく全員が、
フランス在住のフランス人家族がわざわざカメルーンに旅行に行ったという前提で意見していましたが、
実際はカメルーンの首都ヤウンデ在住の家族です。父親がGDF Suezという会社に勤めているそうです。

誘拐現場はカメルーン北部の観光地の近くで、国立公園に向かう途中、朝の7時に誘拐されたようです。
カメルーン北部はイスラム教徒が支配的な地域で、
ナイジェリアのイスラム過激派ボコハラムとその分派アンサルの活動が活発と言われています。
アンサルは昨年12月にフランス人を誘拐しており、
誘拐の理由はフランスのブルカ着用禁止政策とマリへの軍事介入と主張しているとのことです。

(以上、ソースは
http://www.guardian.co.uk/world/2013/feb/19/france-blames-islamists-cameroon-kidnapping?INTCMP=SRCH
及び
http://www.guardian.co.uk/world/2013/feb/20/french-special-forces-cameroon?INTCMP=SRCH)


わかっている事実関係は以上にして、ヤフーニュースのコメントを見て行きます(引用は””内)。

”西アフリカの人たちは、基本的にフランスが大嫌いだからな。”
”これをテロというなら、フランスはアフリカに何をしてきたというのか?自業自得だ。”
”フランス人は旧植民地を訪れる時に、もっと警戒すべきだろう。”

⇒このあたりは、フランスのカメルーンに対する植民地支配に言及したコメント。

最初の、西アフリカの人たちがフランスが大嫌いとは、聞いたことがないし実感もないですが
何を念頭においてのコメントなのか疑問です・・・

旧仏領はフランス語ができないと使える文献が限られてくるので、
フランス語のできる人しか研究対象にしない傾向があり、私もあまり多くを知りませんが、

旧仏領アフリカ諸国は独立後も様々な形でフランスの支援(介入)を受けており、
例えばクーデターの鎮圧に仏軍を派遣した事例もいくつもあります。
当然、鎮圧された側からすれば仏軍=フランス=悪という認識になるでしょうが、
保護された側の人間がフランスを大嫌いになるとはちょっと考えられません。

もちろん植民地支配下においても奴隷貿易は一時期行われていましたが、
カメルーンを含む西アフリカにおいては西洋の進出以前からアフリカ独自の帝国により奴隷制が敷かれていました。
強制移住、強制労働、強制的な課税など圧制を敷いたのも事実ですが、
列強と協力して権力や富を得た現地人もいました。

フランスに対してどのような感情を抱くかは個人差の一言に尽きるでしょうが、
今回の事件はナイジェリア(旧英領)のイスラム過激派によるものということなので、
植民地支配の議論は関連が薄いかと思います。
アンサルが主張しているのも、ブルカの禁止とマリへの軍事介入という現代の利害ですね。
ここは素直にイスラム過激派(ボコハラム/アンサル)対フランスという図式で見るのが自然かと思います。


”フランス国民は自国の政府がアフリカで何をしているか知らんのか?”
”自国がアフリカで戦争介入してる時に、アフリカ旅行とかどうかしてるわw”
”ほんと、このご時世にフランス人がアフリカを子連れで観光旅行って…。なめてますよね。”
”このご時勢にアフリカや中近東へ旅行する人々はアホだ。自業自得。”
”この時期に中東に行く人って、どの程度の危機感を持っているんでしょうね。既に指摘があるように、認識が甘いのかなと思います。”
”子連れで中東へ旅行?考えられない。”
(これは少し毛色が違いますが中東という勘違いをまとめてしまいたいのでここに引用しています)

⇒このあたりはフランスのマリへの軍事介入中にフランス人がカメルーン旅行なんて危機管理がなってないという議論ですね。
カメルーンを中東と思っている人が(2人も)いるのは残念の一言です。
日本でプレーしていたサッカー選手もしたし、わりと日本人にも耳馴染みのある国だと思うのですが・・。

これら全て、フランスからわざわざ子供まで連れてカメルーンに旅行したという間違った前提に基づく意見なので
これ以上考察することもないのでしょうが、
(念のため、駐在者が週末に国内の観光地を訪れるのはごくごく普通というか、
都市にいても娯楽が少ないので、国立公園に行くというのは極めて常識的な選択肢かと思います。
むしろ治安(強盗など一般犯罪という意味での)は都市の方が悪いのが一般的なので、
当然、子供だけ都市の家に残していくという選択肢はありえないですね。)

やはり「アフリカ」を一枚岩に捉えているのが気になります。
マリとカメルーンは西アフリカの旧仏領という意味では関連の深い国です。
ただ、「アフリカ」で軍事介入している時に「アフリカ」に旅行なんて、という表現は
どう考えてもマリとカメルーンの地理的距離や断絶性を無視した意見と言わざるを得ません。
ヨーロッパに置き換えると恐らくポルトガルとドイツくらいの距離でしょうか。

百歩譲って距離を無視したとしても、駐在者という可能性が思いつかないのがまた一つ問題です。
2月という時期、カメルーンという有名な観光資源のない国、家族連れ、と来れば
駐在者の家族かな、と思ってもいいと思うのですが(そして事実そうなのですが)、
アフリカで先進諸国の人間が就業しているイメージ自体が希薄なのでしょうか。

ちなみに既出のガーディアンの記事によると、カメルーン在住のフランス国籍者は6,000人だそうです。
対して、在カメルーン日本人はなんとたったの60人だそうです(ソース:外務省HP)。
あらためてカメルーンという国との日本の関わりの希薄さを感じますね。

中東との混同については、アフリカ=イスラム過激派のテロが頻発している=中東と同じで危険地域
という認識が透けて見えます。
象徴的なコメントを引用します。

”こんなんじゃ~全てのイスラム圏に行けないな!って言うかイスラム教いらね~わ”
”イスラム過激派の巣窟でもあるアフリカ諸国にフランス国民が遊びで行くには危なすぎると思うけどな~。怖いとか思わんのかな?”

このように、「アフリカはイスラム(悪)の拠点」というイメージが作られつつあるのでしょう。
イスラムについて多くを語れる知識はありませんが、
イスラム自体は決して悪ではありませんし暴力的でもありません。
ジハードの解釈は人によって異なりますが、
少なくとも政治的な報復行為としてのテロはコーランで是認されていないでしょう。

また、イスラム過激派のテロ行為は近年アフリカ大陸で活発化していますが、
今のところ北アフリカと西アフリカに限定されている印象を受けます。

北アフリカはもともとイスラム圏と言っていい地域で、
企業や外務省の分類でもアフリカでなく中東に含まれるくらいなので、
実際のところ、北アフリカとサハラ以南アフリカを「アフリカ」と一括りにして議論するのは現実的ではないです。

北アフリカ諸国と西アフリカ諸国は古くから交易路によって結ばれており、
西アフリカ諸国も内陸部(北部)にはイスラムが浸透し、北部地域ではイスラムが支配的です。
たとえば麻薬の密輸においてはサハラ縦断ルートの存在が指摘されていますが、
西アフリカのイスラム勢力と北アフリカのイスラム勢力との関連については、
米国により可能性として指摘されているというだけで、確証めいたものはないようです。

少なくとも、「アフリカ=イスラム過激派の巣窟」は暴論ですね。
いわゆる脆弱国家がテロリストの温床になっているという意見かと思いますが、
アフリカ諸国全てがテロリストの温床として名高いソマリアのような無政府状態ではありませんし、
言うまでもありませんが、北・西・東・中央・南アフリカと、
地域によって随分と宗教的構図が異なるはずです。
アフリカ諸国は歴史的、文化的、政治的な差異が驚くほど大きく、一枚岩に捉えるのは不可能です。


”思っていた以上に北アフリカやばいな”
”アフリカに近寄ってはいけないということだろうか。”
”自ら死にに行くことなんかないだろうに”
”アフリカ大陸には、一生行かないと思う。もし言ったとしても南アフリカだけだな。治安が悪すぎる”
”アフリカはごく一部の国(ケニアとか南アとか)のごく一部の地域しか行ってはならないと外務省は具体的に
警告を発すべきだ。”

⇒このあたりは「アフリカ=基本的に全部危険」という認識ですね。
カメルーンは西アフリカであって北アフリカではないというのはもういいですね。
この方々はアフリカ全部が危険地帯のような見方をしていますが、
繰り返しになりますが、アフリカを一枚岩に捉え一般化するのは不可能です。
五十何か国をひとくくりにしようというのは無関心からくる理解不足以外の何物でもないです。

また、テロの脅威と一般的な治安は分けて考えるべきかと思います。
言及されている南アフリカ、ケニアは「経済的・政治的に発展した国=安全」というイメージなのでしょうが
強盗や暴行など一般犯罪は大都市に集中しますので
むしろ南アフリカ、ケニアの大都市(ヨハネスブルグ、ナイロビ等)に無防備で行く方が恐ろしいです。
私の直接の知人が強盗に入られたケースはナイロビだけですし、
ケニア駐在を経験された方もナイロビは危ない地域があると仰っていました。
アフリカの三大治安の悪い国は南アフリカ、ケニア、ナイジェリアと
2年ほど前に商社の方が仰っていましたが、ずばり経済発展度合の高い三カ国ですね。

他方、サハラ以南でもタンザニア、セネガル、ウガンダ、ナミビアなどは観光地として有名で、
日本人も毎年相当数が渡航しているはずです。
知らないというだけで危険のレッテルを貼るのは完全に間違いですし、それこそが危険思想です。

テロの脅威の一つはいつどこから来るかわからない点です。
今回のように観光客をターゲットにした事件もあれば、
ナイジェリアの北朝鮮医師殺害のように地方での就業者を狙うものもありますし、
首都や大都市での誘拐や爆破もあります。

ターゲットが「フランス人」や「西洋人」であるならば、
その条件に当てはまる(又はそれと混同される)だけで、どこにいようと狙われる危険があります。

フランスや欧米諸国がイスラム勢力のターゲットにされやすいのに対して、
日本人は立ち位置があいまいですので、
企業等は人材派遣に際してテロよりも一般犯罪に巻き込まれる可能性を考慮しているはずです。
例えば、強姦発生率の高い国には女性を送らないというのは企業でも公的機関でもよくあります。

つまり、「テロが発生する=治安が悪い」という図式は必ずしも正しくないのです。
秋葉原や心斎橋の無差別殺傷、つい先日のグアムの殺傷なども、
普段は安全な場所で起こったテロ行為ですよね。
テロが発生したからといって、その地域を危険と見なすのはあまりに軽率です。


さて、最後に変わったコメントを一つ。

”ナイジェリアに連れて行かれる?!かわいそうすぎる!!助けてあげて!!!無事ですように!”

⇒ナイジェリアのイメージが極悪なのか、個人的に何か被害にあったのかわかりませんが、
ナイジェリアという国が単体でひどいというイメージをお持ちのようです。
誘拐 → かわいそう!助けてあげて! なら何とも思わないのですが、
ナイジェリア → かわいそう!助けてあげて! はどうしたことかと・・。

北朝鮮医師惨殺のイメージなのか、はたまた?
ボコハラムがイスラム武装勢力の中でも過激というのは世界的な認識のようですが、
ナイジェリアという国自体は大騒ぎするほど危険な国ではないです
(もちろん危険な地域は複数ありますが)。
在留邦人はカメルーンよりもずいぶん多いですし、日本企業も多く参入しています。
もし、ナイジェリア=ボコハラム=残虐=怖い国というイメージができてしまっているのならばとても残念です。
ボコハラム以外にも危険因子はありますし、逆に機会も多くあります。


何にせよ、メディアを通して得られる情報だけに基づいて正確な認識はできません。
ここでコメントを引用して考察することを通して言いたかったのは、
コメントした方々の理解不足や誤解を責めるためではありません。
間違ったイメージがついてしまうのは報道に少なからず責任があります。

しかし、ごく限られた、そしてしばしば恣意的に切り取り編集された情報に基づいて
何かを判断し批判するのは悪しき風潮だと思います。
ネット特有の現象だとは思いますが、不特定多数の目に触れ、伝播することを考えれば、
根拠のない無責任な発言は慎むべきだとは思います。

ただし、この記事の趣旨としては、間違ったイメージによってアフリカがどんどん危険視され、
今でさえ希薄な日本との関係がますます疎遠になったり、
日本人のアフリカ観がネガティブになってしまうことを危惧しているに過ぎません。

特にテレビや専門性の低い論客の記事など、メディアを通して流れてくる情報は、多くが
「テロとの戦い」や「西洋対イスラム」のような、
欧米発の単純化された政治的プロパガンダによってゆがめられています。

今回のような事件は痛ましく、被害者の方々が無事保護されることを願う限りですが、
その報道が、既成のプロパガンダを助長し間違ったイメージを植えつけるものではなく、
関心を呼び起こし、自ら情報を収集し正しい理解に努めるためのきっかけとなればいいと思います。


意図せず長くなりました。お読み頂いた方、お時間をありがとうございました。
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プロフィール

SJ

Author:SJ
大阪生まれ、東京かぶれ、オーストラリア、ナイジェリア経由、2013年英国にてアフリカ研究修士号取得。
関心事項はアフリカ、開発、国際情勢、日本の政治・社会、メディア。
趣味は海外旅行と映画鑑賞、写真撮影。
世界で一番好きなものは猫(大小問わず)。

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